琵琶湖の漁師が届ける季節の湖魚|魚種とエリ漁の紹介

日本最大で最古の湖、琵琶湖。

滋賀県には琵琶湖に育まれた、独自の魅力的な暮らしと食文化があります。

今回は、エリ漁を通して感じることができる、淡水の暮らしと湖の魚について紹介します。

淡水の暮らしと湖魚の食文化

琵琶湖の特徴

琵琶湖の風景

琵琶湖は、伊吹山、鈴鹿山脈、比良山系など1000m級の山々に囲まれた、滋賀県の淡水湖です。県内に降った雨や河川の水は、ほとんどすべてが琵琶湖に流れ込みます。

また、約670km²の面積に、約235kmの湖岸延長、最大約104mの水深を誇る、日本最大の湖でもあります。

そして実は、10万年以上の歴史をもつ「古代湖」でもあります。今の琵琶湖になる前の、古琵琶湖の期間も数えるとなんと400万年の歴史です!
バイカル湖やタンガニーカ湖、カスピ海などに代表される「古代湖」は、世界に20ほどしかない大変貴重な湖です。

歴史が古いということは、それだけ独自の進化をとげた生物たちもいます。

琵琶湖には1700種以上の動植物が生息していると報告されており、そのうち60種以上が琵琶湖の固有種です。

固有種の湖魚には、ビワコオオナマズ、ビワヒガイ、ビワマスなど琵琶湖の名前を取ったものや、ニゴロブナ、イサザ、ホンモロコなど地元で長年親しまれてきたものがいます。

水鳥の飛来も多く、毎年10万羽以上が訪れています。重要な湿地として、ラムサール条約の指定湿地にもなっています。

琵琶湖の食文化(無形民俗文化財)

独自の生態系を育んできた琵琶湖ですが、人々の暮らしにとっても大きな存在です。琵琶湖ならではの魚を使った郷土料理も数多くあります。

以下に紹介する、滋賀県で「無形民俗文化財」として選ばれた「食文化財」5つのうち、3つが湖魚の郷土料理です。

1.湖魚のなれずし

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/funa_zushi_shiga.html)

塩漬けした魚と米を漬けて発酵させた古来のすしを「なれずし」といいます。「ふなずし」がその代表といえるでしょう。ふなずしには琵琶湖で獲れた、子持ちのニゴロブナを使うことが多いです。

フナ以外にも、ウグイ、ハス、モロコ、アユ、ビワマス、コイ、ドジョウなどもなれずしにします。

乳酸菌による整腸作用もあり、栄養価が高い健康食品でもあります。

2.湖魚の佃煮

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/gorino_tsukuda_ni_shiga.html)

佃煮も滋賀県でもっとも親しまれている湖魚料理のひとつです。ゴリ、モロコ、アユ、イサザ、ハス、エビ、シジミ、タニシなどさまざまな魚介を丸ごと煮ます。大豆と煮たイサザ豆やエビ豆、アユの昆布巻きなど佃煮に含まれます。

お土産としても人気の高い郷土料理です。(写真はゴリの佃煮)

3.日野菜漬け

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/hinona_zuke_shiga.html )

滋賀県蒲生郡日野町が発祥の伝統野菜「日野菜」を漬けたものが日野菜漬けです。糠漬けが伝統的ですが、浅漬けや桜漬けもあります。

日野菜は、葉側が紫色で、根の下の方が白いかぶの一種です。10月から12月末が旬です。

4.丁稚羊羹

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/decchi_youkan_shiga.html )

丁稚羊羹(でっちようかん)は、小豆と砂糖で甘く作った餡に、小麦粉や米粉を混ぜて、竹の皮で包んで蒸しあげた料理です。もちもちとして、素朴な味がおいしいデザートです。

近江八幡地域から全国へ奉公に出た丁稚たちがお土産として持って行ったなどの説があります。

5.アメノイオ御飯

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/amenoio_gohan_shiga.html)

「アメノイオ」とは、雨の魚のことで、雨が降り増水した川へ産卵のため遡上するビワマスのことをこう呼んでいます。昔の漁具ではなかなか捕まえられなかったビワマスは、川にさかのぼってくる時期に出会える幻の魚だったようです。

産卵期を迎え、脂が落ちたビワマスをよりおいしく食べる工夫が詰まった、郷土料理です。

参考:うちの郷土料理:農林水産省

琵琶湖のエリ漁で採れる魚

エリ漁とは

エリ漁

滋賀県にお住まいの方なら、このような湖に並んだ杭を見たことがあるのではないでしょうか。

これは「エリ」という、定置網の一種です。湖岸から沖に向かい、矢印のような形で設置します。

魚は障害物にぶつかると、それに沿って沖の方へ泳いでいく習性があります。この習性を利用して、矢印の形の両サイドにある「つぼ」という部分に誘導して、魚を獲るのが「エリ漁」です。

エリ漁は、琵琶湖で1000年以上前から続く伝統漁法であり、また、必要な分だけ獲るサスティナブルな漁法でもあります。

漁の流れ

漁期は午前3時ごろから出発し、小型定置網漁(エリ漁)の網の引きあげをはじめます。エリ以外にも設置しておいた、延縄漁や竹筒漁の仕掛けをあげていきます。

魚をあげたり、選別したりと作業をしていると夜が明けてきます。船の上で朝日を拝むと、自然の素晴らしさ、山と湖の関係を実感します。

魚を獲り終えたら、帰港して、魚の水揚げと選別をおこないます。

水揚げした湖魚の中には、流通にはあまり乗らない「未利用魚」も含まれます。「未利用魚」といっても、おいしい湖魚には変わりないので調理していただいたり、待っているお客様に届けます。

四季折々の湖魚

琵琶湖ではどんな魚が獲れるのでしょう?
ここで、琵琶湖に棲む多様な魚の一部を紹介します。

ビワマス(Oncorhynchus rhodurus)サケ科

ビワマス

夏が旬の琵琶湖固有種です。湖の深いところに生息していて、エビ類やコアユをエサとしています。大きいものでは60cmほどになるものも。琵琶湖とつながる河川で、産卵・ふ化し、琵琶湖で大きく育ちます。

ニゴロブナ(Carassius buergeri grandoculis)コイ科

ニゴロブナ

冬から春にかけてが旬の琵琶湖固有種です。春、琵琶湖岸のヨシ原や水田に来て、外敵に卵を食べられないように産卵します。郷土料理「ふなずし」の原料になる魚です。漁獲量が大きく落ち込んだ時期もありましたが、稚魚の放流事業などの効果で増加傾向にあります。

ホンモロコ(Gnathopogon caerulescens)コイ科

ホンモロコ

琵琶湖のコイ科魚類の中でもっともおいしいと言われている、琵琶湖固有種。体長7~15cmの小型の魚です。秋から春にかけてが旬で、春は子持ちのものが獲れ、秋は非常に多くの脂がのったものが獲れます。何も付けずにおいしいので、まずは素焼きで食べたい湖魚です。

イサザ(Gymnogobius isaza)ハゼ科

イサザ

琵琶湖の北部に生息する固有種です。体長3~8cmの小型で、とても旨味が強い魚です。年によって漁獲量が大きく変動するので、漢字では「魦(いさざ)」と書きます。冬、春が旬です。

アユ(コアユ )(Plecoglossus altivelis)アユ科

コアユ

冬~夏が旬。琵琶湖で育つアユは体長10cm前後と大きくならないので、コアユと呼ばれています。大部分の個体が琵琶湖で成長しますが、一部春になると川を遡上します。冬に獲れる稚魚はその透き通った見た目から「氷魚(ヒウオ)」と呼ばれ、釜揚げなどにしていただきます。

スジエビ(Palaemon paucidens)テナガエビ科

スジエビ

体長2~4cmほどの小さなエビです。琵琶湖北部の沖合で沖曳網(底曳網)で獲ります。火を通すと、鮮やかな赤色になり食欲をそそります。シンプルに素揚げにしてもおいしいです。

ハス(Opsariichthys uncirostris)コイ科

ハス

10cm程度の小型の個体は「ハスゴ」と呼ばれ、冬から春が旬です。冬のハスは脂がのり濃厚な味わいです。大型のものは春から夏が旬で、あっさりとした味わいです。魚食性の魚で、琵琶湖ではコアユを食べて成長します。

セタシジミ (Corbicula sandai Reinhardt)シジミ科

セタシジミ

冬と春が旬の琵琶湖固有種の貝。殻の大きさは2cm程度で、砂地に生息してます。肥えておいしくなる冬のセタシジミは「寒シジミ」と呼ばれています。しぐれ煮、シジミ飯、味噌汁などで親しまれています。

琵琶湖でできる漁体験

要領を掴んで網をたぐってハイペースになっていきます

滋賀県内では、琵琶湖の漁を体験するツアーに参加することができます。フィッシャーアーキテクトでも、年間通して漁体験を受け付けています。

フィッシャーアーキテクトで行っている漁体験「BI-WAKE UP」は、幅広い方に体験してもらえるよう、いくつかのプランを用意しています。

まず体験してほしいのは「Intro BI-WAKE UP」という、往復2時間の非日常クルーズです。エリ漁を始めとする、琵琶湖の多様な漁法に触れ、実際の漁の様子を見学したり、魚について学んだり、漁師視点で琵琶湖の暮らしを体験できます。

>>体験内容 | Intro BI-WAKE UP 琵琶湖の漁導入紹介 | FISHER ARCHITECT

湖魚を自宅でも美味しく

守りたい滋賀の食文化

かつては、世界一の魚食国だった日本ですが、昨今急速に魚離れが進んでいます。スーパーなどで手に入りやすい海の魚でさえ、このような状況なので、湖魚となるとなじみがない層がとても多く、ますます魚離れが心配されます。

しかしこれまで伝えてきたように、琵琶湖が織りなす食文化はユニークでとても価値のあるものです。

琵琶湖固有種であるゲンゴロウブナのなれずし(ふなずし)や、ビワマスのアメノイオ御飯など、琵琶湖なければ育まれなかった食文化は地域の財産とも言えます。

琵琶湖が生んだ、滋賀の郷土料理や湖魚の料理を、ぜひ積極的に暮らしに取り入れみてください。きっと、懐かしいけれど新しい味に出会えるはずです。

淡水魚はくさくない

魚は鮮度が落ちやすいぶん、新鮮なうちに下処理をすることが大切です。

湖魚の中には、足が早いなどの理由で流通に乗らない「未利用魚」と呼ばれる魚種もあります。

湖魚をさばく様子

「淡水魚は臭みがある」とよく思われますが、しっかりと処理をした湖魚は臭みを一切感じさせません。少しおいて熟成させることで、臭みどころかむしろ、グンとうま味が引き立ちます。

新鮮な湖魚を琵琶湖漁師から直送で

フィッシャーアーキテクトでは、漁師自らが琵琶湖で獲った鮮魚を、おいしく食べていただける状態に下処理をして、直送しています。

四季折々の湖魚を数種セットで届けるため、琵琶湖の魚の多様さも感じていただけます。

琵琶湖の淡水魚が気になった方は、ぜひご賞味ください!

レシピも同封しているので、はじめての方でも意外とかんたんに調理して、食べていただけます。