淡水魚って生で食べられる? 琵琶湖の魚を刺身でいただく

琵琶湖の魚フルコース

この記事では淡水魚の生食が危険といわれる要因とその対策を解説します。記事の後半では、滋賀県で昔から食べられてきた、お刺身や洗い、ふなのこまぶしなどの郷土料理を例に挙げながら、琵琶湖における淡水魚の魅力を紹介します。

なぜ、淡水魚の生食が危険といわれているのか?

「淡水魚を生で食べてはいけない」と聞いたことがある人は多いと思います。なぜ、海の魚はお刺身で食べるのに、淡水魚は生食できないといわれるのでしょうか。

淡水魚の生食が危険だという理由は、寄生虫の感染リスクによるものです。

淡水魚を宿主とする寄生虫は、顎口虫(がっこうちゅう)、横川吸虫(よこがわきゅうちゅう)、肝吸虫(かんきゅうちゅう)などがありますが、特に顎口虫は重い症状が出ることがあり恐れられています。

寄生虫は、寄生する動物(宿主)を変えていくライフスタイルを持ちます。
顎口虫の場合、終宿主はネコ、イヌ、ブタ、イノシシ、イタチなどです。第1中間宿主として動物プランクトンのケンミジンコ、第2中間宿主としてカエル、サンショウウオ、ヘビ、淡水魚を利用します

ヒトは中間宿主あるいは待機宿主なので、寄生されたものを口にすることで、顎口虫に寄生されるリスクがあります。

顎口虫が人間の体内に入り寄生されると、皮膚にミミズ腫れの様な症状が出ます。

また、まれではありますが、中枢神経系、眼球、肝臓、肺、消化管入ってしまうことがあり、失明や麻痺など重大な症状を引き起こすことがあります。

もし、ミミズ腫れなど心当たりのある症状が出てきた場合、すぐに病院へ行って、手術や投薬で治療してもらいましょう。

ちなみに顎口虫がヒトの体内で成虫になることはないので、二次感染は起こしません。

淡水魚のお刺身を食べるには

これまで述べたような寄生虫がいるなら、淡水魚のお刺身は食べられないのでしょうか?

結論としては、一度冷凍してから刺身にすると安心して食べられます。

魚に付いた寄生虫を死滅させるには、熱を加える方法と冷凍する方法があります。

顎口虫の場合、-20℃で3~5日の冷凍により幼虫を殺すことができます。日本の家庭用冷凍庫はJIS規格で-18℃以下になるように作られていますので、自宅の冷凍庫でも処理することが可能です。

しかし、生食は危険という前提ではありますが、リスクの少ない淡水魚も存在します。

日本最大の湖がある滋賀県では、昔から淡水魚のお刺身などが食べられてきました。

「まず、琵琶湖に棲む魚は固有種を筆頭にとても美味です。淡水魚はクセのある匂いや寄生虫に対する不安から他の地域ではそのまま生で食べることは希ですが、琵琶湖の魚は刺身や洗いにして湖魚本来の繊細な味を楽しみます。これは美しく水温もさほど高くない琵琶湖の水の中で魚たちが良質のプランクトンを餌にしてじっくりと時間をかけて育ってきたからに他なりません。大昔から滋賀の人たちは琵琶湖の幸ともいえる湖魚の特性をよく理解し、その持ち味を最大限に引き出す食べ方を心得ていたのです」

【ビワズ通信 No.40】琵琶湖・淀川のなかまたち|水のめぐみ館「アクア琵琶」

琵琶湖の魚の中でも、外来魚のブラックバスや雷魚など危険な魚種もありますが、フナやニゴイなどは比較的リスクが少ないと言われています。琵琶湖固有種のビワマスに関しても、寄生虫のリスクはほとんどないと言われています。

もちろん100%はないので、寄生虫のリスクについては知っておいていただきたいですが、きちんと処理することで味わえる、淡水魚の魅力にも気づいていただけたらと思います。

刺身で食べられている琵琶湖の魚

琵琶湖の魚が生で食べられていることをお伝えしましたが、どんな種類の魚があるのでしょうか?

魚の特徴とともに、調理例をいくつか紹介したいと思います。

ニゴイ

ニゴイはコイ科の淡水魚です。白身はこりこりとした食感とあっさりした甘みが特徴です。

傷みが早いため、新鮮なものを血抜きして適切な処理をしていただきます。地元では洗い(※)にし、酢味噌であえた「泥酢あえ」が好まれています。

洗い:鮮魚の調理法。冷水で振り洗いすると身が引き締まり、脂肪が除かれるので、さっぱりといただける。

ニゴイの刺身

ニゴイの刺身

フナ

流れのゆるやかな場所に生息する雑食性の淡水魚。

ギンブナは各地で獲られ食されている重要な魚です。刺身の他、焼いたり煮たり、様々な食べ方があります。

ニゴロブナは琵琶湖固有種であり、滋賀県の名産品「ふなずし」の原料となります。

フナの刺身

フナ料理

フナづくしのメニューです。

ふなの子まぶし

滋賀県の郷土料理で、冬から春にかけて獲れる子持ちの雌のフナで作ります。

洗いのこりこりとした食感を楽しめ、見た目にも美しい料理です。

フナの子まぶし

ビワマス

大きいものでは60センチにもなるサケの仲間。琵琶湖と河川を回遊して成長する淡水魚で、琵琶湖にしか生息しない固有種です。

脂ののった季節のサーモンピンクの身には、マグロのトロにも劣らない旨味があります。

漁獲が不安定で貴重な魚ですが、初夏に滋賀県内の湖北や湖西にある川魚専門店で入手できます。

ビワマスの刺身

ビワマスの刺身とイクラ

イワトコナマズ

琵琶湖と瀬田川の一部、および余呉湖で獲れる、滋賀県の固有種。60センチほどに成長し身はエビのような食感で、クセがなく甘味があります。なかなか流通には乗らない貴重な魚です。ナマズでは珍しく刺身として食べられてきました。

イワトコナマズの刺身

ビワマスとともに盛り付けた豪華な一皿。

湖魚の刺身の魅力

現代の暮らしの中ではなかなか淡水魚を口にする機会はないかもしれません。

でも、海の魚にも負けない魅力とおいしさがある淡水魚を、ぜひ味わってみてほしいと思います。

新鮮なうちに下処理をすませれば、驚くほどおいしく、「淡水魚が臭い」といったイメージが覆ります。

フィッシャーアーキテクトでは、漁師自らが琵琶湖で獲った鮮魚を、おいしく食べていただける状態に下処理をして、直送しています。

四季折々の湖魚を数種セットで届けるため、琵琶湖の魚の多様さも感じていただけます。

琵琶湖の淡水魚が気になった方は、ぜひご賞味ください!